FUJIFILM GFX 50R HANDS ON|富士フイルム×東京カメラ部

Vol.3

東京カメラ部10選 2014 別所隆弘 × FUJIFILM GFX 50R

生まれ育った琵琶湖周辺をはじめ、滋賀や京都を中心にドラマチックな風景写真を撮影しているプロフォトグラファーの別所隆弘さん。知人の所有するGFX 50Sで撮影したときの画質に驚愕し、大きなカメラは二度と使わないという決意を覆してGFX 50Rのモニターに参加。撮影からRAW現像まで作品化するまでの工程の中で感じた中判センサーの実力を伺った。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

──GFX 50Rを手にした時の印象はいかがでしたか?

普段使用しているフルサイズのカメラと比べると大きいと感じましたが、これはセンサーサイズが大きいから仕方のないこと。でも手に取ったときに軽いと感じて、そのギャップがおもしろかったですね。普段使っているフルサイズ機と変わらないレベルで、そのような軽量化路線に振ったことは好印象でした。僕はフルサイズ機をいつも皆に勧めている立場ですが、やはり中判センサーは細部の描写に違いがありますね。等倍で見たとき、例えば木の幹のひび割れなどの緻密さが違うんです。フルサイズは十分にキレイですよ?しかし精査してわかるということは、A0で出力したときに圧倒的に差が出るだろうなと。勝負どころで使いたいカメラですね。

Interview Vol.3 別所隆弘

──風景写真において、センサーサイズが大きいことは有利に働くと思いますか?

写真表現においてセンサーサイズは関係ないことも多く、スマホでも1インチセンサーでも、素晴らしい写真を撮る方はたくさんいらっしゃいます。しかし、データサイズに余裕があるということは、その後の処理の余裕に繋がるので、自分のミスまでリカバーしてくれると思います。ですから、僕個人としては仕事でこそ使いたくなりますね。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

──それでは写真を見ながらお話を伺っていきます。

夕焼け時の逆光でこんなに青空はキレイに出ませんよ、普通は。青空も出ていれば、青空から夕焼けへのグラデーション、雲の質感と色、太陽の周辺のゴールドの輝き、全て完璧で感動しました。センサーの性能とレンズの性能、両方の力あってのことだと思いますが、恐ろしいほどに色が乗るなと思いました。僕ら風景写真家は逆光を使いたがりますから、その条件での色再現性が高いとありがたいんです。通常、現像処理で無理をしないと行き着けないところに、現像ソフトの基本操作程度だけで到達できるのはとても助かります。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

ここから2枚は同じ場所でほぼ同時刻に撮っています。まず1枚目。逆光下でここまでキレイに出ると嬉しくなりますね。水面も美しく、これは小さなセンサーでは細部が潰れてしまうようなシチュエーション。煌めきがドラマチックに出ています。ピント位置は右の木ですが、この距離でも枝の細かい線がシャープに出ていますね。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

太陽が暮れていき、山肌に隠れた瞬間です。シャッタースピードは1/25、焦点距離は100mm、手持ち撮影。この設定でも手持ちができるのは、レンズとボディの重さのバランスが良いからだと思います。僕は手ブレしやすい「手ブレマン」のはずなんですが(笑)。こちらは白鳥はシルエットにしていないのですが、しっかりと白が出ているんです。この白の出方に驚きました。普通は夕焼けに引っ張られてこんな正しい色にならない。これはホワイトバランスの正確性が影響しているんだと思います。フィルムメーカーのノウハウが注がれていることを感じた1枚です。

──この2枚は夕暮れ時の色合いも見どころですね。

特に2枚目はなかなか出せない色合いだと思います。見た目そのままですし、くすみや太陽の最後の輝きを完璧に捉えてますね。あと手前の草が潰れていないところは中判センサーならでは。何も逃げられない。これシャドウ部を引き上げたら色もしっかり残っていると思いますよ。色情報が闇の中に残っている。これは調べたわけではなく感覚的なものですが、ダイナミックレンジは15~16段はあるような気がします。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

定番の撮影スポットです。河津桜の時期は初めてでした。これはしっかり現像してます。ISO1250の高感度撮影。手前の桜はかなりの暗さであるうえに、街灯、お店の灯り、地面の暗い反射などを受けてかなり色かぶりしているんですよ。そんな悪条件で現像をしてどこまで耐えられるか選手権、みたいなテーマで仕上げていきました。結果、レイヤーかけて色を起こしてフィルターをかけて、ソフトを4段階使っているんですが、それでも破綻していない。違和感がなくて落ち着くところがすごいんですよ。

──良い条件で撮った写真のように見えますね。

データの素性が良くないとできないことですよ。条件が悪くてもそれを後から救ってくれるわけです。どのジャンルの写真家が使ってもありがたいと思います。スカイツリーのパイプも細かく出ていて、僕はそういうところにグッときます。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

今回提出した作品の中で、一番しっかりと現像処理をしたものです。ブリーチバイパスすらかけてますから。みなとみらいの、定番ポイントから撮っています。雲に「現像しました感」は強烈に出ていますが、夕陽が写ったビルの窓あたりがいいんですよ。あまりわざとらしさがない。線が太くなったり、トーンジャンプで破綻するところを耐えるんですよ。細いところは細いままだからスッと見られるんですよね。特に空とビルの境界線は破綻しやすい箇所ですが、モアレも出ずに耐えています。現像をしっかりする方にもおすすめしたいですね。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

これは太陽の周辺以外のほとんどの部分が真っ黒だったんですが、シャドウを引き上げると色がしっかりと出てきました。もっと引き上げられるけれど、嘘くさくなるのでこの程度に留めています。普通に撮れば太陽の周囲が白飛びをする。だから白飛びさせないようにする。そうすると手前は黒く潰れる。それがシャドウ部の階調の豊かさによって作品になるんです。鳥居すら見えなかったくらいで、撮り手も撮影中は認識していないものが見えてくるのが楽しかったですね。人の眼は黒潰れしませんから、黒潰れした写真は空気感がなくデフォルメされているように見えがちです。つまり、濃淡が見えると空気感が見えるわけです。よく写真で「空気まで写る」と表現されることがありますが、それは「闇が写ること」なんだろうなと思いました。僕はずっと「空気なんて目に見えないから写らないよ」と言っていたんですが、GFX 50Rで空気感の正体を初めて知ることができました。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

──一転して、とても自然に「切り取った」ような1枚ですね。

これまでは撮らないような写真。撮り手としてはキレイだと感じているけれど、他人には伝わりづらいために作品としては発表しづらい。でも、この1枚に中判カメラの良さを感じるんです。最近は「エモい写真」が人気じゃないですか。エモーショナル(emotional)な写真って、見せたいところと見せたくないところを極端にしている写真だと思うんですね。見せたい色はガッと上げる。見せたくないところはノイズなりシャドウなりに落とし込んで情報を単純化する。単純で理解しやすいから「エモい」という感想を持つのだと思います。GFX 50Rで撮った写真は正反対。全ての情報が入っているために見た瞬間は「エモい」ではなく、「世界がそこにある」という感覚になります。自分がいいなと思った空間をそのまま残してくれる。作品としてはあまり発表しませんが、こういうナチュラルな写真も僕は好きなんですよ。でもキャラがあるんで(笑)。家に飾ってあったら気持ち良くなる写真ですね。

Interview Vol.3 別所隆弘 Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

今回、梅を撮った一連の作品の中で、これが僕の中では一番のお気に入りです。1枚目がJPEG、2枚目がRAWからの現像後。参考のために両方提出しました。普通、JPEGとRAWって情報量も発色も全く別物で、僕はJPEGを封印したいくらいに思っています。ただ、富士フイルムのJPEGはキレイだと聞いていたので、久しぶりに両方で撮ったんです。驚きましたね。どっちがJPEGかわからなくなるんですよ。現像して満足していたら実はJPEGだった、ということもあったり。これまでは、仕上げた作品はJPEGと開きがあることがほとんどでしたが、どうですか?ほぼ変わらないですよね?煌めき感を出すためにコントラストを少し上げたくらい。JPEG撮って出しでもコントラスト+1くらいに設定すれば、ほぼ変わらないかもしれません。これはすごいことですよ。太陽背負っている中でこんなに青空やピンクが出るとは。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

逆光の中、梅の幹のテクスチャーが触れそうなくらい出ています。基本的な現像処理しかしていないものの、シャドウは+50くらい持ち上げていますね。それでここまでの質感描写。細かい枝と明るい空の境界にはパープルフリンジが出そうなものですが、全くそれも見られません。青空も濃厚ですよね。太陽が花に隠れたカットもありましたが、敢えて逆光写真であることを伝えるためにこちらを選んでいます。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

雲が出てきて光がなくなりました。梅を曇天の下で撮ると、紫がかったり、盛大に色転びをすることが多いんですね。それが何の調整もせずにこの色で出たから驚きました。梅のシリーズはどれも同じ日に撮っていますが、雲の流れが速く目まぐるしく光の状態が変わっていたんですね。しかし、どの写真も目で見た色がそのままで出てくる。本当にホワイトバランスが優秀ですよね。これまでは頻繁にホワイトバランス設定を変えることが多かったですが、今回はほぼオートでした。正確なのか、色が好みなのか。僕にはとても好ましかったです。

Interview Vol.3 別所隆弘

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

手前は日射しを浴び、奥は日陰。その色がしっかりと再現されています。レンズはGF100-200mmF5.6 R LM OIS WRですが、前ボケがキレイだなあと思いました。梅の色の違いや濃淡も出ていて上品なボケ。両側から前ボケを入れることで中央の梅を目立たせています。前ボケのハイライトが飛ばないところ、地面の緑の華やかさ、黒く落ち着いた土なども空間を作ってくれていますね。

Interview Vol.3 別所隆弘

──GFX 50Rでの撮影の総評をお願いします。

すでに返却をしてしまいましたが、手元にあれば間違いなく使いますね。勝負どころの撮影では間違いなく使うと思います。最強の武器があるのに使わない人間はいないですよ。それと、レンズのロードマップはこれからの充実に期待したいです。風景写真にはズームレンズが必需品ですが、35mm判換算で14mmからの超広角ズーム、400mmくらいまでの超望遠ズームレンズがあるといいですね。逆にこの2つの画角で撮れるのならば、標準域の写真は他人にお任せしてしまい、必殺の1枚を撮るためだけにGFX 50Rを手にするかもしれません。格闘技では体重が絶対的な優位を作るように、カメラではセンサーサイズが大きく余裕のあるデータであることは、間違いなく大きなアドバンテージになります。使ってみて、中判センサーの優位性をまざまざと感じました。

さんの写真

東京カメラ部10選2014

別所隆弘 Takahiro Bessho

写真家(風景写真) / 文学研究者(19世紀アメリカ文学)
滋賀県在住
ナショナル・ジオグラフィック社 2017 Nature Photographer of the Year "Aerials," 2nd place winner.

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最薄部46㎜・質量775gの小型軽量化を実現したレンジファインダースタイルの中判ミラーレスデジタルカメラ

画質を最重要視し、中判フィルムカメラを開発・製造し続けてきた富士フイルム。その歴史の中で培われてきたレンジファインダーを彷彿させるスタイルで生まれ変わった「GFX 50R」。新たなGFXシステムの可能性を担う、往年の中判フィルムカメラのような高画質と機動性の両立を実現しました。小型・軽量を追求した775gの軽量ボディが日常の一瞬やストリートスナップなどを高画質で記録していきます。

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