FUJIFILM X-E3 HANDS ON

Vol.9

東京カメラ部10選2013 鈴木達朗 × FUJIFILM X-E3

ストリートスナップの世界で名を馳せている鈴木達朗さん。Xシーズは複数台所有しているが、中でもX100シリーズを愛用し、雑誌からのポートレート依頼もX100Fでこなすほどだという。熱烈なXユーザーの目から見た最新のX、X-E3とは。

Interview Vol.9 鈴木達朗

──Xシリーズを愛用するようになった経緯を教えてください。

最初は一眼レフで撮っていましたが、ストリートスナップで使っていると威圧感があり人が逃げてしまうんです。それを回避するために1インチセンサーのカメラまで試しましたがどうしてもしっくりこなかったんです。しかしある日、X100Sの存在を知り、使ってみたら探し求めていたカメラだと思いました。コンパクトサイズでありながら一眼レフよりも性能も画質もいい。それはもう衝撃でした。それ以来、X100シリーズです。画質の素晴らしさも感動もので、特に高感度の強さを感じます。一眼レフ時代はISO800が限界でしたが、X100S、X100TのときでISO3200、X100FならISO 6400まで常用できます。僕はストリートフォトの人間なので豊かなボケはいらないんですよね。ボケだけならばフルサイズセンサーが向きますが、そうでないのであればAPS-Cで充分です。

──X100シリーズは23mmレンズ(35mm判換算で35mm相当)が固定ですが、23mmレンズに対する思い入れはありますか?

頭の中が完全に35mm相当の画角になっているので、他の画角にすると距離感が合わなくなってしまうんです。人に近寄りたいときは、1mに置きピンをしていますが、35mm相当で1mくらいというのが被写体と自分の緊張感、そして写真的なダイナミック性にちょうどいいんです。28mm相当もスナップではよく使われる画角ですが、それだと被写体と近づきすぎることになってしまいリスクが高まります。よく、スランプになったらカメラを変えるといいと言うじゃないですか。僕の場合、X100TをX100Fに変えてスランプを克服したことがあります。同じ画角なのに不思議ですよね(笑)。X-E3もレンズはXF23mmF2 R WRの1本勝負でした。

──レンズ交換式のXではX-Pro2をお使いとのことですが、X-E3を手にしての感想は?

X-Pro2と同じ画質を持っているのに小型軽量で操作性も良いと思います。XF23mmF2 R WRはX100シリーズの23mmレンズと比べると少しだけ大きく感じます。交換レンズとしてはかなり小さいですが、全長はX100用のもの比べると長いので、ストリートではなく、日常的なスナップ向きかもしれません。

──今回はストリートスナップではない、日常的なスナップをX-E3で撮ってくださいました。

X-E3を手にしたときに、きっと散歩をしながらの撮影や風景に向くなと思ったんです。普段から、そういう写真も撮ってはいるんですけれど発表はしていません。今回はルールをひとつ決めました。それは愛犬の「しゃたろー」と散歩をしているときにだけ撮影しようと。しゃたろーは、ある写真賞の副賞でいただいた20万円で衝動買いした犬なんです。そして、こいつと一緒にいつかは表彰台に上がろうという気持ちで日々写真と取り組んでいて、今回は賞ではありませんが、良い機会だと思ったので初めてしゃたろーを発表しようと思ったんです。

──作品はカラーです。普段はモノクロで撮影をされていますね。

全てJPEG撮って出しで、フィルムシミュレーションはVelviaを使っています。モノクロ化するか迷ったんですが、ここまでキレイに撮れているし、犬と一緒というのどかな時間に撮ったものをモノクロにするのは違うかなと。X-E3であれば日常もここまで撮れるし、お散歩スナップでもこんなにいろいろなことを伝えられるということを表現したかったんです。ちなみに、普段モノクロで発表している作品はRAW現像時にモノクロ化をしていて、JPEGのフィルムシミュレーションはVelviaにしています。最初からモノクロのフィルムシミュレーションを適用してしまうよりも、後から適切なフィルターを見極めながら現像処理をしたいんです。

Interview Vol.9 鈴木達朗 Interview Vol.9 鈴木達朗 Interview Vol.9 鈴木達朗 Interview Vol.9 鈴木達朗

──それでは写真を見ながらお話しを伺っていきます。しゃたろーをローアングルから捉えた写真が多いですね。

犬の視線で撮れたらおもしろいなと思い、ローアングルで撮ることは心掛けました。しゃたろーがいつも見ている世界を一緒に撮っていくというのもテーマのひとつだったんです。タッチAFやタッチシャッターではなく、フォーカスレバーでフォーカスポイントを移動させて撮るか、フォーカスポイントは中央のままにしておき、シャッター半押しで構図を変えて撮っています。

Interview Vol.9 鈴木達朗 Interview Vol.9 鈴木達朗 Interview Vol.9 鈴木達朗

──陰影のある風景写真たちです。

散歩中に気になったものを素直に撮っています。普段はRAW現像をするので、そのときにデータが残るように露出補正を-2/3にして撮るクセが付いていますが、JPEG撮って出しであってもその設定のままでいきました。僕にとっては標準的な明るさで、無理に暗い部分を持ち上げなくてもいいなと思っています。それだけの理由ですが、わざとらしくならない露出設定で気に入っていますね。

Interview Vol.9 鈴木達朗

──とても日常的な雰囲気のスナップですね。

僕が住んでいるあざみ野付近です。ストリートではなく、こういう場所で余裕を持って撮ることは、僕にとっても新たな気付きがありました。僕の写真は被写体に突っ込んでいくため奥行き感のない写真がともすると多いのですが、この写真のように一度その場のものを全て受け止めてから撮ると変わりますね。

Interview Vol.9 鈴木達朗

──普段のストリートスナップの匂いが漂う1枚です。

日中はF11やF13ですが、夜の撮影は開放付近を使います。そのために被写界深度が浅くなり、この写真のようにピントが後ろにいき、人物がボケてしまうことも起こりますが雰囲気が伝わればいいと僕は思います。何でもかんでもピントが合っていれば良いというものではないのがスナップのおもしろさのひとつですね。

Interview Vol.9 鈴木達朗

──しゃたろーの少し短めの足がかわいらしいですね(笑)。

両者の関係性、また、同時に足を上げているところも興味深い一枚になりました。

Interview Vol.9 鈴木達朗

しゃたろーが通りかかったので、怒って吠えている犬です。これはお気に入りの1枚。ブレ具合からも勢いを感じます。今回のシリーズでは連写はしないことにしていました。だからこそ瞬間を大切にしますし、画角が頭に入っていないと撮ることが難しいと思います。

Interview Vol.9 鈴木達朗

──よく見ると、奥にしゃたろーがいます。

一度、ポートレートの撮影で傘を使ったものをとったことがあり、この日は雨が降っていたのでそれをしゃたろーでやってみようと思いました。もっと露出を明るめにしてもよかったですが、暗さが雰囲気を助長してくれているとも思いますし、しゃたろーがとにかくかわいい顔をしていますね。

Interview Vol.9 鈴木達朗 Interview Vol.9 鈴木達朗 Interview Vol.9 鈴木達朗

きっと僕は、ストリートスナップを止めたら風景を撮っていると思います。わずかな光に照られさている公園、木と電線の構図のカッコ良さ、アスファルトに落ちるユニークな影の形。このような、どこか寂しさがあるような風景写真は好きですね。こういう風景が自分の中ですっと入ってくるんです。

Interview Vol.9 鈴木達朗

雪が降った日です。電灯の影響でちょっと黄色いんですが、手前の雪はしっかりと白く出ているので、これでいいかなと思いました。

Interview Vol.9 鈴木達朗

──最後にX-E3に対する総評を。

瞬間的な撮影に不満なく対応してくれました。いつもの置きピンではなくAFを使いましたが、かなりの速さという印象です。XシリーズのAF速度が問題といわれるときがありますが、僕が思うに「ハイパフォーマンスモード」をONにしていないのではと思っています。ONにすると電池の減りは速まるもののAF速度は格段に向上します。Xシリーズの性能を最大限に享受したければハイパフォーマンスモードは不可欠だと思います。

──これからもX-E3は愛用しますか?

今回のような散歩をしながらの撮影に使っていきたいです。ストリートスナップとは異なる気持ちで撮る写真の楽しさにも気付かせてくれましたし、X100シリーズと出会ってからは気になる新製品がなかったのですが、X-E3はとても楽しく使うことができました。

鈴木達朗さんの写真

東京カメラ部10選2013

鈴木達朗 Tatsuo Suzuki

ストリート写真を撮っています。
2018年 dotART(イタリア)主催 URBAN 2018 Photo Awards 審査委員長。
最近の実績として、2017年 富士フイルム ギャラリーXにて個展開催。パリのEspace des Coutures Saint Gervaisにてグループ展「Tokyo Now」出展。アメリカ ブルックリンを始めとする全米七都市を横断する屋外展示 The Fence 2017にイン、等。
本年ドイツの名門出版社Steidlより写真集を刊行予定。

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