FUJIFILM X-E3 HANDS ON

Vol.5

東京カメラ部コンテスト入賞者 下川和之 × FUJIFILM X-E3

カメラ史に名を刻む数々の名機を使いフィルム撮影を楽しんできた下川和之さん。フィルムだけでなくデジタルも本格的に導入すると決めたとき、Xシリーズ以外の選択肢はなかったという。フィルムで撮るという行為が染み付いた身からX-E3はどのように映ったのかを聞いた。

Interview Vol.5 下川和之

──フィルムカメラも愛用されているそうですね。

ライカやローライフレックスを使っており、一時期はフィルムだけでもいいと思うことすらありました。デジタルのレンジフィンダー機を導入してからも、いかにフィルムカメラのように使うかにこだわっていた面もありますね。しかし、次第に考え方が変わってきて、デジタルならではのメリットを活かすべきだと。そのときにXシリーズ以外は考えられず、X-Pro2を購入しました。X-Pro1は所有していたことがあったので久しぶりのXシリーズでしたが、やはりXシリーズはデザインが素晴らしいです。いまの性能・機能を持っていたとしても、外観がまったく違ったならば選ばないかもしれない。そのくらいカメラの佇まいは僕にとっては重要。常に持ち歩くわけですから、「物」としての存在感も大切なんです。X-E3にも美しいデザイン性があり、持ち歩くのが楽しくなるカメラだと思います。

──X-Pro2を手にして「デジタルならではの撮り方」に切り替わりましたか?

撮影枚数が圧倒的に増えたと思います。X-Pro1と比較するとEVFは格段に見やすくなっており、写真の仕上がりイメージをそのまま見ながら撮ることができます。他のメーカーのEVFと比較したことはないですが、ストレスは皆無ですね。また、EVFを覗きながら露出補正ダイヤルを操作できるのも、僕にとってはXシリーズを選ぶ上での大きなポイント。デザイン性と機能性の両方が考えられていますよね。

──フィルム好きとしては「フィルムシミュレーション」はいかがでしょう。

Xシリーズが好きな理由のもうひとつがフィルムシミュレーションです。フィルムの完全再現ではないと思いますが、フィルムを交換するかのような感覚や、JPEGで満足できる画を叩き出してくれて、編集作業に時間を費やさないでいいという点などは、フィルムメーカーだからこそのDNAではないでしょうか。しかし、僕はほとんどPROVIA/スタンダードしか使いませんし、他のパラメータもいじらない主義で、できる限り素の状態でカメラ任せにしたいと思っています。

──X-Pro2とX-E3とでは、「アドバンストSRオート」の追加が大きな違いです。

デジタルで撮影をするときは、シャッターを切ることと構図にだけこだわっていたいんですね。X-Pro2でもプログラムオートで撮ることが多く、X-E3ではもちろんアドバンストSRオートを多用しています。通常のプログラムオートと比べてどう優れているのかが気になってしまい、かなり露出に迷うようなシチュエーションで敢えて撮影をしたり(笑)。しかし、見事にシーンを解析しているなという結果になりました。ストリートではしっかりと被写体を追尾するAFになりましたし、露出値の選択も正確でした。これがスイッチひとつで発動するのはとても便利ですね。

Interview Vol.5 下川和之

──それでは写真を見ながらお話しを伺いたいと思います。まずストリートスナップですね。

ストリートスナップばかりを撮るとき、ポートレートばかりを撮るときなど、ひとつのことに打ち込むタイプなので時期によって撮る内容がガラリと変わります。まさにこの写真はアドバンストSRオートですね。歩きながら1回シャッターを切っただけなのに、こんなにキレイに撮れるとは驚きです。ボケ味もありますし、少し暗かったにも関わらずメインの人物をしっかりと捉えています。こういう写真はフィルムの場合、置きピンじゃないと撮れません。相当に難しいと思います。

Interview Vol.5 下川和之

これもアドバンストSRオートですね。顔をしっかりと認識しているはずで、だから傘の影になっていても顔が暗くなっていないのだと思います。

Interview Vol.5 下川和之

──この写真もかなり明暗差が強い1枚ですね。

僕が住んでいる広島の平和公園です。すぐ向こうに原爆ドームがあり、灯籠流しをする川ですね。X-E3を手にしてから、街のさまざまな場所を歩いて撮るという作業が再びおもしろくなりました。

Interview Vol.5 下川和之

ガラスのリフレクションです。普段はあまり撮らないようなモチーフですが、アドバンストSRオートでどう撮れるかが気になり。とてもドラマチックに仕上がりました。

Interview Vol.5 下川和之

これはじっくりと撮っています。EVFで露出を確認しながら撮影しましたが、PCで見てみたら絶妙で一切レタッチする必要はありませんでした。エッジが立ちすぎているわけではないのに質感描写が優れているという印象を受けました。

Interview Vol.5 下川和之

──一転してランドスケープではかなり爽やかな世界観です。

中判カメラを使うときに似た気持ちで撮った写真で、なるべくコントラストと彩度を低くし、絵画のようなイメージで撮っています。かなり明るめの露出で撮っていますが、僕の中で必ずこうというものはなく、被写体の内容に向く露出で撮るようにしています。もう少し明るく撮ってしまうと白飛びを起こしそうというギリギリを、EVFを見ながら露出補正で探っています。DRはオートにしていたので、カメラががんばって粘ってくれたんでしょうね。

Interview Vol.5 下川和之

これもアドバンストSRオートにしつつ露出補正をマイナスにしています。雨が降っていて薄暗かったので、そのときの状況を残そうと思いました。

Interview Vol.5 下川和之

これは露出補正をマイナス2くらいにして撮っています。写真はとにかく露出がすべて。Xシリーズを使うようになってから、露出補正ダイヤルが最高の位置に付いているので、頻繁に触るようになりました。

Interview Vol.5 下川和之

煙突からの煙と雲に集中して撮りました。そうしたら雲の隙間から降り注ぐ光の筋まで美しく捉えられていて、ここまで写るのかと。

Interview Vol.5 下川和之

これはお気に入りの一枚。僕の部屋なんですが、カーテンの隙間から入ってきた光に照らされている葉をどうしても撮りたくなったんです。これもアドバンストSRオートですが、難しい露出をものともしませんでした。どこで露出を測るか迷うようなシチュエーションで、特にフィルムの場合はきっと何枚も露出を変えて撮るはずです。明るく照らされた葉の生命力を描きつつ、その他の部分の陰影もしっかりと出したいという狙いを、オート撮影とEVFを見ながらの露出補正ワークで簡単にできるのはデジタルならではですよね。デジタルの価値を存分に感じた1枚です。

Interview Vol.5 下川和之

──続いてポートレートです。かなりの逆光ですね。

これもアドバンストSRオート+露出補正です。このときフードを忘れてしまったのでフレアが発生しているんです。これはレンズ性能の話しになるかもしれないですが、ここまでの逆光でも鮮やかに肌色と着物を描写しています。フレアやゴーストを採り入れた写真も好きなので、ここまで描写してくれると安心ですね。

Interview Vol.5 下川和之

日が暮れる少し前の時間帯。これもレフ板やストロボは使っていませんが、肌色がとても美しく再現されています。これもかなりの逆光ですが、このようになぜか過酷な光でリスクを背負って撮ってしまいがちなんです(笑)。

Interview Vol.5 下川和之

まったく光が当たっていない状況で撮っています。Xシリーズで撮ると、どこか1枚トーンがある写真になり、それが画像加工ソフトを通してしまうとなくなってしまう気がしています。このトーンがあるために、XシリーズのJPEGが好きなんです。

Interview Vol.5 下川和之

──最後にX-E3を使ってみての感想を。

まず小さくて軽い。ここ最近はX-E3だけで撮っていたので、久しぶりにX-Pro2を触ってみたら大きく感じてしまいました。豊富なXレンズを使えるボディとしては驚くほど小さいですし、画質もフラッグシップ機と同等で、非常にコンパクトにまとまった良いカメラだと思います。そのぶんEVFの倍率は小さくなっていますが、それもすぐに慣れてきます。比較すると違う、というレベルですよね。僕は高級フィルムコンパクトも使うんですが、X-E3はそれらとほぼ同じサイズ感だと気付き、だから持っていても違和感がないんだと思います。僕は使い方が荒っぽいのでWR付きのレンズの方がよく、いまはXF35mmF2 R WRしか使っていません。今回、XF18-55mm. F2.8-4 R LM OISも使わせていただき、かなりおもしろさを感じました。X-Pro2には単焦点を、X-E3にはズームを付けるというような贅沢な使い分けができるといいですよね。

下川和之さんの写真

東京カメラ部コンテスト入賞者

下川和之 Kazuyuki Shimokawa

広島県広島市在住。
「Xシリーズ写真展2016秋展示」
「東京カメラ部2016写真コンテスト Instagram部門入選」

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