FUJIFILM GFX 50R HANDS ON|富士フイルム×東京カメラ部

Vol.1

東京カメラ部10選 2013 八木千賀子 × FUJIFILM GFX 50R

ライフワークとしている八丈島での撮影をはじめ、日本中の美しい風景をドラマチックに切り取っている写真家・八木千賀子さんは、立体感や階調などをカメラに求めている。それはセンサーとレンズの性能が物を言う部分。中判フォーマット43.8×32.9mmの5140万画素のセンサーを持つGFX 50Rには、発表当初から興味を惹かれていたという。初めての中判デジタルGFX 50Rで撮影をした感想を聞いた。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

──中判センサーのどのような点が、風景写真を撮る際の強みだと感じ、GFX 50Rを手にしたのでしょう。

フルサイズセンサー以上のサイズを経験したことがなかったので、立体感の違いがどの程度現れるのかということにとても興味がありました。画素数は、最低でも2000万画素は欲しいという感覚は持っていますが、高画素であればやはり描写に違いは出るなと感じています。GFX 50Rは5140万画素あり、またフルサイズセンサーと中判センサーとでは、同じ画素数でも違いがさらに大きいとも聞いていましたから、いつかはGFXシリーズを使ってみたいと思っていたんです。

Interview Vol.1 八木千賀子

──最初に撮影をしたときの感想はいかがでしたか。

実際に手にしてみると、まず大きさに驚きました。35mmフィルムカメラと中判カメラのような大きさ・重さに違いはなく、十分に手持ちで撮れるなと感じましたね。ファーストショットは八丈島の海でした。曇天で光がない状態で、普通ならば感動的な写真にはなりづらいような条件でしたが、背面液晶で確認をしたときにリアリティーが圧巻で、その場のものがそのまま写っていると感じましたね。

──レンズは何をお使いになりましたか?

GF32-64mmF4 R LM WR、GF100-200mmF5.6 R LM OIS WRの2本のズームレンズと、GF120mmF4 R LM OIS WR Macro、GF45mmF2.8 R WRの2本の単焦点レンズです。どのレンズも、現像ソフト で補正をかけなくても周辺がまったく歪まないという点に驚きました。光学設計が優れているのだと思います。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

──それでは写真を見ながら伺っていきます。まずしっとりと湿度を感じる1枚です。

八丈島ですね。JPEG撮って出しでRAW現像はしていないです。肉眼で見るより写真で見た方が葉や木に立体感を感じましたね。特に葉の艶がすごい。この写真を撮ったときに、GFX 50Rの性能の高さが疑いようのないものになりました。手持ち撮影のためISO1600ですがノイズも気になりません。葉の緑は艶やかでありながらも細やかなグラデーションで描写している点が気に入っています。今までは葉の表面のハイライトが飛びすぎてしまうところがありましたが、RAW現像で調整をしなくてもしっかりと粘っていますよね。雨が降っていましたが、防塵防滴だったので安心して撮影できました。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

──続いては一転して雪景色ですね。

GF120mmF4 R LM OIS WR Macroを使い長野で撮影しました。曇っていて柔らかい光だったので、これもJPEG撮って出しです。ボケが豊富な写真においても、中判センサーであることの優位性は感じました。とにかく、ボケ方がやわらかいんです。カメラの設定で「ハイライトトーン」はマイナスに設定し、さらに軟調なフィルムシミュレーションである「PRO Neg. STD」で撮影することで、さらにやわらかさを強調していますが、カメラの中で全てそんな設定ができるのもすごいことですよね。ピントの合っているところはキリッとしていて、葉の部分を拡大してみるとものすごく緻密。細かい雪までしっかりと確認できます。

──ホワイトバランスの調整は?

マニュアルで合わせています。冬で冷え切ったイメージになるように、色温度で設定した後に「WBシフト」で青みが少しだけ出るように微調整しています。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

──マジックアワーの写真です。

愛知県の犬山城です。グラデーションの滑らかさが気に入っています。グラデーションにならずに層になってしまうような写りも経験してきたので、ここまで滑らかに表現されることが嬉しかったです。これは現像処理をしていますね。ホワイトバランスをスポイトで犬山城に合わせていて、空のグラデーションの色はそれを基準に出ている色で、犬山城と空を分離して編集してはいません。どうしても犬山城を白くしたかったんです。三脚を使い、ISO100でシャッタースピード2秒。水面の反射を取るためにPLフィルターを使っていますが、フードにフィルター操作のための窓があり便利でした。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

八丈島の夜です。レリーズ時間は913秒、ISO800、F4、開放ですね。星を撮る場合、時間とISOと絞りの値のバランスは、表現したいことで変わってきます。この一枚を撮る前にISO6400で撮影しているんですが、その数値を参考に数式を使い算出しています。今回は星の軌跡をさほど長くしたくなかったのと、太陽が昇りはじめて撮影のリミットが近づいていたので913秒にしました。スマートフォンアプリ「FUJIFILM Camera Remote」のリモートレリーズを使っています。アプリ上にレリーズ時間が表示されるので長秒撮影には役立ちます。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

これもJPEG撮って出しで、フィルムシミュレーションは「PROVIA」です。この透き通るような描写がすごいなって。雪とキツネの足跡の陰影と立体感、ススキの1本1本の緻密さ、地面のキラキラとした表情が、その場の冷え込んだ空気を伝えてくれます。F16で絞り込んで撮影しています。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

──続いてはスナップ風の写真ですね。

背面液晶モニターがバリアングルなので、それを活かそうとローアングルで撮影してみました。長野県の妻籠宿です。描写力が高いので、自分がそこにいるような感覚になりますよね。GFX 50Rのしっとり感の再現力はすごい。これはGF32-64mmF4 R LM WRの開放で撮影していますが、開放であっても緻密ですし、ボケ味はもちろん美しく、本当にその場の空気を写し取れている感じがします。スナップ派の人にもとても向くカメラじゃないでしょうか。中判デジタルは三脚にガッチリと固定して撮るというイメージがありますが、それが覆された気がしました。背面液晶モニターはタッチ式で、バリアングルで無理な体勢で撮影している時も、AFポイントも簡単に変えられるのは便利です。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

これもバリアングルを使い撮影しています。かなり至近距離からの撮影。拡大しても毛が触れそうなほど描写されています。逆光だったため現像ソフトでアンダーな部分を持ち上げていますが、センサーサイズが大きいぶん、ノイズが出ないまま持ち上げることができました。これがGFX 50Rの威力だと思います。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

GF120mmF4 R LM OIS WR Macroで撮った桜です。溶けていくかのようなボケ味がキレイ。花びらのハイライト部分は白飛びすることが多いですが、しっかりと残ってくれています。これもセンサーサイズの恩恵ですね。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

──とてもかわいらしい写真です。

雪の結晶は太陽の角度によってさまざまな色に輝くんです。でも、マクロレンズや望遠レンズを使い寄って撮影をしないと、キラキラは小さいため写真で目立ちません。GF120mmF4 R LM OIS WR Macroで、とても美しく結晶の反射を写すことができました。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

──とても渋みがあり、湿度を感じる1枚です。

再び八丈島です。ローアングルで、フィルムシミュレーションは「クラシッククローム」を使っています。クラシッククロームは今回が初体験でしたが色再現性に個性がありおもしろいですね。緑を派手にしたくなかったのと、コントラストが強めで陰影がつけやすかったためチョイスしました。曇天の重苦しい雰囲気もうまく出せたと思います。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

──白飛びを起こしやすそうな明暗差の強いシチュエーションですね。

太陽の周辺の雲が白飛びしてしまう可能性が高いと思っていましたが、無事に粘りました。雲はあるものの太陽を真正面にして撮っているので、カメラ的には嫌な状況ですよね。現像ソフトで多少ハイライトを調整してはいますが、元データからさほど変えていません。ハイライトもフルサイズ機以上に粘るなというイメージでしたね。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF32-64mmF4 R LM WR

せっかく搭載されているので、彩度が高い色も階調豊かに表現するという「カラークロームエフェクト」を使ってみました。花びらに立体感がありますよね。フィルムシミュレーションは「VELVIA」なので発色がいいですが、きっと緻密に描写されているのはカラークロームエフェクトの効果もあるのだと思います。

Interview Vol.1 八木千賀子

使用機材: FUJIFILM GFX 50R
+ GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

──最後の写真です。中判センサーの良さが詰まっているように感じます。

物凄く緻密ですよね。雲間に弱い光が射し込んだ瞬間で、弱い光をここまで受け止めて立体感を出してくれるというのに驚きを持ちました。拡大をしても写真の四隅まで細かく描写していますし、霧の中の一部分を切り出しても写真として成立するくらいです。これは長野県の聖高原。気温はマイナス5°くらいでしたが、耐低温仕様なので何の心配もありませんでした。

Interview Vol.1 八木千賀子

──最後にGFX 50Rの総評をお願いいたします。

風景を撮る上で必要な立体感や階調表現に優れていて、ありのままを撮ってくれるカメラだと思いました。そして、弱い光で撮ったときに、いかにいい写真になるか。これこそがカメラとレンズの性能の高さがものを言うと思いますが、GFX 50RとGFレンズは、まさにそこが強みだと感じました。一眼レフの操作に慣れている私でも、EVFを覗きながらさまざまな設定を簡単に変えることができましたし、ISOなど使用頻度の高い設定はカスタムでFnボタンに割り当てることで使いやすくなります。デュアルカードスロットは大切な撮影のときは2枚同時に書き込めてバックアップにもなるので助かります。

──風景写真においてGFX 50Rを使う最大のメリットはどこにありますか?

とにかく描写力に尽きます。フルサイズの上を行く余裕のある画質をぜひ味わっていただきたいです。来年、八丈島の作品で個展を行うのですが、GFX 50Rで撮った作品も展示する予定です。まだGFX 50Rで撮ったデータからプリントはしていないですね。早くプリントでのクオリティーを見てみたいなってわくわくしています。

さんの写真

東京カメラ部10選2013

八木千賀子 Chikako Yagi

1977年愛知県生まれ。2013年に東京カメラ部10選に選出。
2016年にBS朝日「The Photographers3」で取り上げられたことを機に会社を退職し、風景写真家として歩み始めた。伊豆諸島や信州を中心に光を意識した作品を撮影している。
写真家の辰野清氏に師事。

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GFX 50R

FUJIFILM GFX 50R

最薄部46㎜・質量775gの小型軽量化を実現したレンジファインダースタイルの中判ミラーレスデジタルカメラ

画質を最重要視し、中判フィルムカメラを開発・製造し続けてきた富士フイルム。その歴史の中で培われてきたレンジファインダーを彷彿させるスタイルで生まれ変わった「GFX 50R」。新たなGFXシステムの可能性を担う、往年の中判フィルムカメラのような高画質と機動性の両立を実現しました。小型・軽量を追求した775gの軽量ボディが日常の一瞬やストリートスナップなどを高画質で記録していきます。

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