FUJIFILM X-T3 HANDS ON|富士フイルム×東京カメラ部

Vol.1

東京カメラ部コンテスト入賞者 高橋直哉 × FUJIFILM X-T3

広角レンズを駆使した煌びやかな夜景写真と、人の営みと構図の妙で切り取ったスナップ写真という、対極の作風をXシリーズで撮影している高橋直哉さん。X-Pro2からXシリーズをメイン機に据え、新機種X-T3も発売直後に入手したという。確実な進化を遂げたX-T3の魅力をヘビーユーザーの視点から伺った。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF8-16mmF2.8 R LM WR

──Xシリーズをメイン機に据えている理由を教えてください。

X-T1の時に、フィルムシミュレーションを含めた画質に定評があるということは知っていました。画素数やEVFなどを鑑みて購入を見送ったのですが、X-Pro2が発売され、これならば、と購入しました。フルサイズ機との比較検討もしましたが、小型軽量で持ち運びやすさを重要視しましたね。X-Pro2の撮影範囲がフレーム表示されるOVFファインダーはメリットが大きく、特にスナップを撮る場合、ファインダーの外側の人の動きを見て撮影できる点が気に入っています。

Interview Vol.1 高橋直哉

──スタイルの異なるX-T3をなぜ購入したのでしょう。

スナップではどちらも使いますが、X-T3はとにかくオールラウンダーだなという感覚。AFの強化の恩恵が大きいですよね。発表されて3時間後に触りに行ったのですが、初期のレンズのXF35mmF1.4 RですらAFが速くなっていたんです。これには感動しました。僕はXF56mmF1.2 Rをスナップでよく使っていて、Xシリーズの中では比較的大きいレンズですが、これもきっと速く動くだろうと思ったことが、購入の理由の比重を一部占めていると思います。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF10-24mmF4 R OIS

──それでは写真を拝見しながらお話を伺いたいです。まず夜景ですね。

XF10-24mmF4 R OISで三脚を使い撮影しています。夜景の場合はブラケティングで露出1段違いのカットを3~5枚撮り、後からPC内で合成するというスタイルで仕上げることが多いです。撮影直後の処理時間を考えるとカメラ内の設定の長秒時ノイズ低減は使わないですね。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF8-16mmF2.8 R LM WR

夜景を撮る場合は広角レンズの選択肢が多いほどありがたいです。これはお借りした新レンズ「XF8-16mmF2.8 R LM WR」で撮影しています。このレンズを使いたいがために出かけた場所ですね。東京スカイツリーの向かい側のビルに飲食フロアがあり全面ガラスになっており、そこから撮影しています。実はスカイツリーは至近距離にそびえているのですが、超広角で撮影をしたらどうなるだろうって。迫力ある1枚になりました。

──X-Pro2と比較すると、画質の差は感じますか?

合成の際にズレが生じるため、周囲を数ピクセル程度カットすることがありますが、画素数が上がったことでトリミングが怖くなくなりました。また。長秒撮影時はセンサーが熱を帯びて輝点ノイズが出てしまうことがあるのですが、センサーが新しくなったことで、輝点ノイズが出にくくなったなと思います。これは比較的明るいシーンなのであまり実感はありませんが、もっと真っ暗なシーンだと差は感じられると思います。これは裏面照射センサーの恩恵でしょうね。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF8-16mmF2.8 R LM WR

XF8-16mmF2.8 R LM WRはフィルターがつけられないレンズなので、長秒とは言ってもシャッタースピードは1/3秒です。今回の機種から常用ISO感度がISO160になりました。以前はISO200でしたから、こういう撮影での露出の許容値が上がりましたね。発色は気に入っています。これはRAW現像しています。XシリーズはJPEGの色がいいと言われていますが、RAWでも富士フイルムの色はあると感じています。具体的にいうと青色のコクと赤の発色。夜景の場合、夜空が紫っぽくなったりするとパッとしないですが、Xシリーズにはそういう傾向がないため、現像プロセスも短く済んでいます。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

──続いては一転してモノクロ写真です。

これはJPEG撮って出しで、フィルムシミュレーション「ACROS」を使っています。そして、X-T3に搭載されたモノクロの色調調整機能「モノクロ調整」を併用し、冷黒調を-2にしています。個人的に心地良いモノクロの色がこれくらいという感覚。モノクロ調整の追加により、ACROSの可能性はさらに広がったと感じます。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

──ここからはスナップのシリーズです。

夜景撮影とは真逆の世界だと思っています。夜景は「見たまま」ではなく、現実と想像の間くらいを表現するイメージで取り組んでいますが、スナップは見た光をそのまま撮りたい気持ちで、現像もほとんど行わないです。フィルムシミュレーションは「クラシッククローム」が大好きで、カスタム設定の1番に登録してほぼ常用しています。クラシッククロームは、コントラストが高いものの彩度は控えめなんですが、カラーのスナップが好きなので、「カラー」は+2に設定しています。フォーカスポイントの移動は8方向レバーですね。タッチ操作も追加されましたが、利き目が左目のためあまり操作しないです。レンズはXF56mmF1.2 Rを使っています。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

光と陰のバランスと、足の向きが揃っていておもしろいと思いました。狙いすませる状況ではなかったので、瞬間的に1、2枚撮っています。かなり暗い状況でしたが、AFもサッと合い機敏に撮れるという印象です。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

夜のスナップです。手前のボケたネオンは車のボンネットに反射したお店の看板の灯り。一瞬通り過ぎた人にピントは合っていますが、かなり暗い状況でもAFは迷うことはありませんでした。X-T3など第4世代センサーと画像処理エンジンの機種から低照度AFの検知する幅は広がっているので、それを信頼して撮っています。夜スナップが好きなのでとてもありがたいです。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

続いても真っ暗な状況です。人物の足元にしか光が当たっていない中、AFがしっかりと合っています。そして、シャドウ部も粘っておりグラデーションが美しく出ています。夜景とは異なり、スナップではISO1600や3200も平気で使います。このようなスナップにノイズだなんだと話していても仕方ないと思っているので、頭を切り換えています。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

──これはまるでターミネーターのような1枚ですね。

そう言っていただけてすごく嬉しいです。こういうシチュエーションに遭遇したら、絶対に撮ってみたいと思っていた念願の1枚。車のテールランプが反射しているのを発見し、瞬時に目の部分に重なるような角度を見つけて撮影しました。一瞬の作業。友人と一緒だったのに撮れたことが嬉しくて声を出してしまいました(笑)。よほどの人混み以外は、スナップ撮影時は顔認識をONにしていますが、その恩恵もあったと思います。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

X-T3に初搭載の「スポーツファインダーモード」を使用しています。夜景は情報が多く密度があるものを目指していますが、スナップはミニマルに余計なものを削いでいくという考え方で撮影しています。この時にスポーツファインダーモードは便利で。画角の外の人の動きなどを見ながら、写真に何を入れるかを、いつシャッターを切るかをコントロールしてるんです。名称に「スポーツ」と付くものの、X-Pro2のOVFと同じ感覚。ライカなどレンジファインダーのカメラの撮り方がX-T3でも楽しめます。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

これもスポーツファインダーモード。光と陰にこだわっています。人の流れが絶えない場所だったので、この構図のバランスになるように待ちました。後からトリミングをして完成させるのではなく、撮った時に成立させる方が、高揚感が強いですよね。これは現像ソフトのプロファイルの中でクラシッククロームを選び、シャドウとハイライトを調整しています。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

ASTIAで撮影し、そのJPEGをベースにレタッチしています。人物の背後の光、人物のシルエットの出方もキレイですよね。色が映えてほしい時はASTIAを使います。しつこくなりすぎないけれど色は出る。そして色合いはポップだと感じます。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF56mmF1.2 R

クラシッククロームをベースにレタッチしています。自分が撮るシチュエーションの中で、テクスチャーは重要なモチーフで、そこに人を入れていくという撮り方をよく行います。光が美しいこともこだわりで、この写真にはそれらが詰まっていますね。しかし、ここを通る人はホテルに向かう人だけという場所で、少しの時間待ちました。ちなみに、僕は最大で待っても10分程度。それ以上は諦めてしまいます。

Interview Vol.1 高橋直哉

使用機材: FUJIFILM X-T3
+ XF10-24mmF4 R OIS

向かいから子どもが走ってきました。その子が走り抜けたところを、振り向きざまに撮影した1枚です。そういうスピーディーな撮影でも、しっかりとピントが合っています。これはAFの進化があってこそかなと思います。

Interview Vol.1 高橋直哉

──最後にX-T3の総評をお願いいたします。

オールラウンダーという印象がすごく強いですね。X-T2とは見た目こそあまり変化はありませんが、背面液晶モニターをチルトする際のロック解除が使いやすくなっていること、親指が接地する面積が増えたことによるグリップ力の増加、動画撮影時の配線への配慮など、細やかなアップデートの数々に好印象を持ちました。前機種を知っている人であれば気付く細かい改良点も多いです。僕自身、両極端な撮り方をしていますが、RAW現像をしっかりしたい人も、JPEGで楽しみたい人も、どちらも受け入れてくるところも素晴らしいと思います。X-T2から正統進化した素晴らしい1台です。

さんの写真

東京カメラ部コンテスト入賞者

高橋直哉 Naoya Takahashi

埼玉県在住。
夕景夜景など都市風景の撮影を中心に活動。一方で、カラーでのスナップ作品も多く発表している。国内外のフォトコンテストへ精力的にエントリーする傍で、近年は雑誌・書籍への作品提供も行っている。

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X-T3

FUJIFILM X-T3

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