FUJIFILM X-E3 HANDS ON

Vol.3

東京カメラ部10選2012 原朋士 × FUJIFILM X-E3

工場夜景やファインアートなどで知られる原朋士さんは、さまざまなカメラを所持している中、Xシリーズをデイリーユースしている。そんなベテランXユーザーの目にX-E3はどのように映るのだろう。X-E3を使ってみての感想を聞いた。

Interview Vol.3 原朋士

──様々なカメラをお使いとのことですが、Xシリーズはどのような位置づけでお使いなのでしょう。

僕は機能面からカメラを選ぶことがほとんどなんです。車や飛行機を撮っていたときは高速連写ができるカメラを選び、夜景を撮るようになってからはブラケティングを重視して選びました。実はXシリーズはスナップを撮るために選んだカメラだったんです。やがてレンズモニターに当選したこともあってX-T1も導入し、そこからはスナップだけではなく幅広く使っています。本当にベースがしっかりしているカメラという印象で、APS-Cサイズのセンサーに最適化された作りになっていると感じます。フルサイズに引けを取らないボケの美しさもレンズによっては楽しめますし、ダイナミックレンジがとても広く感じられてブラケティングが必要ないとも思わせてくれるほどです。事実、JPEG撮って出しにすることもありますね。日常の持ち歩きはもちろん、電車移動の撮影の場合は主力カメラとなっています。

──X-T1に慣れ親しんでいる身からX-E3はどのような印象を持ちましたか?

気に入っているのはフォーカスレバー。今はXシリーズの定番となっていますがX-T1には付いていません。やはりフォーカスポイントの変更がとても楽ですね。X-T1などの世代のカメラよりも画素数が増えた点も安心できます。解像感の高さと高感度ノイズも両立できており、ISO800やISO1600でも何の問題もないので、手持ちで夜景を撮ることすらできます。さすがにわずかなノイズは乗ってきますが、調整が効く程度ですし、空をあまり多く入れないように構図を工夫すれば、余裕で手持ち夜景ができると思います。

Interview Vol.3 原朋士

──不満点はありましたか?

強いて言えばバリアングル液晶の方が良かったですが、バリアングルにすると現状よりもボディの厚みが確実に増すはずなんです。X-E3はこのフォルムの素晴らしさも魅力ですから、バリアングルの便利さとどちらかを取れと言われれば、それは納得です。スナップでは片手で構えても楽々と扱えますし、夜景撮影時でも軽量のためセッティング作業がとても楽です。工場は海沿いにあるため強風であることが多いのですが、カメラが軽いため風の影響を受けづらいという利点もありますよね。レリーズケーブル用のソケットがあるので、レリーズボタン用アクセサリーを取り付けれるところはお気に入りです。

Interview Vol.3 原朋士

──今回、X-E3ではXF18-55mmF2.8-4 R LM OISとXF23mmF2 R WRを使っていただきました。まずXF18-55mmF2.8-4 R LM OISの感想をお願いします。

ほとんどのものが撮れてしまうレンズですね。このようなアーキテクチャー系の写真は歪みがあると画にならないのですが、全く歪みに悩まされることはありませんでした。これがキットレンズということに驚きます。一応、現像をして仕上げてはいるものの、色味だけを考えるとカメラ内RAW現像の方がはるかに優れています。僕はクラシッククロームをデフォルトで使用していますが、カメラでクラシッククロームを適用するのと、フィルムシミュレーション対応の現像ソフト上でクラシッククロームを適用するのとでは仕上がりが異なるんです。絶対にカメラのようには再現できません。ですから、大抵はJPEGのデータでクラシッククロームの色味を見ながら現像で合わせていくという作業工程です。僕はブリーチバイパスがもともと好きで、工場写真では色味を抜いてメタル感を出すことが多いんです。クラシッククロームも青っぽさがあり彩度は低く、とてもメタル感の演出には向きます。

Interview Vol.3 原朋士

──アーキテクチャー系の撮影にX-E3は有利ですか?

とにかく軽量で、タッチシャッターも付いています。変に力を入れることなく撮影ができるので、手持ちでも水平垂直を出しやすいと思います。厳密な調整は現像時に行うにしても、撮影時にできるだけしっかりと撮る方がいいです。街中で偶然見つけた建造物も、すべて手持ちで問題なく撮ることができました。

Interview Vol.3 原朋士

──モノクロの作品もありますね。

アクロスも素晴らしいと思います。粒状感の入り方が本当にきれい。ハイライトからシャドウにかけてのノイズの入り方が抜群で、これは相当量のフィルムに関するデータを持っていないと作れないと思います。フィルム時代から写真をやっている人間にとって、これは大きな魅力だと思います。モノクロはファインアート系やスナップで使うことが多いですね。

Interview Vol.3 原朋士

──続いて工場夜景です。十八番ですね。

これは長時間露光した写真を数枚重ねて仕上げています。これはHDRのような効果を狙っているのではなくて、車の光の筋を増やしています。雨の夜の工場だったので交通量が少なく、そのままだと寂しい写真になってしまいますから。濡れた路面の反射のキラキラとした雰囲気が気に入っています。

Interview Vol.3 原朋士

──この影は原さんご自身でしょうか。

そうです、自撮りですね。まさにこれはクラシッククロームのJPEGを見ながら仕上げています。空の色、雲の描写、こういう色味が大好きです。これは入間川の河川敷です。ブルーインパルスを撮りに行きました。今回のテーマとは離れているので作品は提出していませんが、X-E3のAFが大きく進化していて、望遠ズームレンズを使って余裕でブルーインパルスを撮ることができましたね。

Interview Vol.3 原朋士 Interview Vol.3 原朋士 Interview Vol.3 原朋士 Interview Vol.3 原朋士

──イルミネーションの写真も多いですね。

遠くのイルミネーションがボケてしまうかと思っていましたが、レンズが優秀でしっかり描写しています。単焦点レンズよりも、手ブレ補正付きのズームレンズの方が夜のスナップでは安心感があるかもしれません。全て手持ち一発撮り。さすがに長秒は無理ですが、手持ちだけと割り切ってもかなり楽しめると思います。このような夜撮りでは、僕は背景で露出を固定してからフォーカシングをして撮るという手順にしています。特に人が来るのを待って撮るような場合は、あらかじめAEロックをした状態で待つのがコツですね。

Interview Vol.3 原朋士

──XF23mmF2 R WRも使用されていましたが、いかがでしたか?

F2シリーズのレンズとのバランスはとても良いと思います。今は23mm、35mm、50mmの3本のF2シリーズがありますが、X-E3の発売にこの3本が存在するというのは素晴らしいことですね。開放F1.4のレンズはどうしても大きく重くなるので、マッチングはF2の方がいいと思います。そして描写ももちろん抜群です。この写真を撮ったときはさすがだと思いましたよ。リフレクションは美しいですし、普通は補色の関係などでうまく両方を出せないオレンジと緑がキレイに出ています。

Interview Vol.3 原朋士

──工場写真をたくさん撮られています。

まず鹿島の工場です。台風上陸前の夕方ですね。明るさが残っている時間帯の工場写真も好きなんです。昼間なので長秒撮影をしなくてよく、排煙をピタッと止めることができるところがいいんです。青空よりも曇天だったり霞が出ているようなときに撮りに行きたくなります。

Interview Vol.3 原朋士

──ここも同じ場所でしょうか。

そうです、鹿島の工場の夜ですね。風が強くて下の方の木が揺れています。これだけ風が強いと、三脚で固定してもカメラが揺れてしまうものなんですが、X-E3は軽量で小さいため風の影響を最小限に留められます。強風の中、しっかりとピントがブレずに合っていて緻密に描写されています。これは3枚露出違いでブラケティング撮影し、後からHDR合成しています。ハイライトの白飛びとシャドウの黒潰れを防ぐのが目的です。

Interview Vol.3 原朋士

──夕景が美しい1枚です。

広島県の大竹という場所です。奥に見えるのが瀬戸内海。こういう微妙なトーンを出してくれると嬉しくなりますね。霞の中に瀬戸内海の島々の姿がうっすらと浮かび上がっています。こういう微妙な表現はJPEG撮って出しか、カメラ内RAW現像が向きますね。現像ソフトではかなりの難しさですし、日本画のような上品な色合いとトーンを出すには苦労します。工場だけを撮ることが目的ならば、工場がライトアップされて目立つ夜に撮ればいいんですが、風景の中の工場はこういう時間帯にこそ醍醐味があります。また、35mm換算で35mm相当の画角は、周辺の情報も写真の中に残すことができるのでおもしろいですね。

Interview Vol.3 原朋士

──続いても美しい夕焼けと工場ですね。

棚田と水島コンビナートです。ここは頻繁に訪れている場所で、普通は電線が写らないように配慮して撮るんですが、今回は広く風景の一部として撮ってみました。このような人の生活がある場所から撮るときは、ロケハンをして地元の方がいらっしゃれば挨拶をするようにしています。お邪魔している身ですからね。裏にため池があって蚊が多いんです。最近では地元の方がかゆみ止めを差し入れで持ってきてくださるなど、とてもお世話になっています。

Interview Vol.3 原朋士

──X-E3はこれまでお持ちのカメラとうまく住み分けできそうですか?

最初はX-T1からX-T2への買い替えを検討していましたが、X-E3を買い足しすることにしました。価格的にリーズナブルであるのももちろんですが、スナップで使うにも手軽なサイズ感でありながら、X-T2やX-Pro2と同じ画質を叩き出してくれるのですから文句なしです。ひとつ下のセンサーサイズだと、レタッチ時に周辺画質で苦労することがありましたが、X-E3にそのようなストレスはありません。僕のスタイルにはとてもマッチしている1台ですね。

原朋士さんの写真

東京カメラ部10選2012

原朋士 Tomoshi Hara

東京都出身/ 横浜市在住。
東京カメラ部10 選2012 に選出されてからカメラ人生が大きくかわり、都市夜景、工場夜景の撮影をメインとしながらもファインアート、ミニマルアート、アーキテクチャー、風景など幅広く写真撮影を楽しんでいる。
「Hondax東京カメラ部フォトコンテスト」2015 入選、
「工場夜景・美の祭典」フォトコンテスト2014 優秀作品賞/2015 入選、
「シグマフォトコンテスト2015」入賞、「Xシリーズ写真展」7期連続入選など。

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