FUJIFILM X-E3 HANDS ON

Vol.4

東京カメラ部コンテスト入賞者 藤谷弘樹 × FUJIFILM X-E3

ストリートスナップに取り組み続け、11人のメンバーとともにZINE「VoidTokyo」も発刊している藤谷弘樹さん。これまでXシリーズを手にしてこなかったが、X-E3発売と同時に購入。数あるXの中でX-E3に決めた理由と使ってみての感想を聞いた。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──X-E3ではじめてXシリーズを使いはじめたそうですね。

ストリートを撮る仲間の多くはXを使っているんです。ずっと気になっていましたし、少し使わせてもらうと、軽いし、使いやすいし、画質はいいし、最高なんですよね。やはりストリートでは軽さが重要。3~4時間歩きっぱなしになるので、少しでも軽い方が楽なんです。だたし、コンデジだとどうしてもセンサーサイズとレンズ性能的に画質に満足がいかないときもあり、かといってフルサイズはシステムサイズ的に大きいという印象。APS-Cセンサーのミラーレス一眼というのは、僕の中でバランスがもっとも良いんです。

──X-Pro2やX-T2などのWフラッグシップ機ではなくX-E3を待った理由とは?

仲間のものを使ってみて、ちょっとだけ大きさがネックになっていました。でも、操作系統も含めてXは快適だったので、X-E3のような小型かつフラッグシップと同等画質の機種の発売を待っていたんです。自分のカメラとして使い込んでみると、改めて操作感の良さに気付かされます。いちいちメニューから設定を呼び出さなくても、直感的に露出ワークができる点は本当にありがたいですね。僕は絞り優先AEで撮影することが多いのですが、ISOをあらかじめオートではなく任意の数値に設定しておけば、レンズの絞りリングの咄嗟の操作だけで、スローシャッターにして人物をブラすようなこともおこなえます。極力設定に悩むことなく撮りたいと思っているので、このシンプルさは素晴らしいと思います。

──一方でタッチパネル式の液晶を導入するなど、スマホ感覚の操作にも対応しています。

背面液晶で指先のタッチで設定を変えられるのは楽でした。普通の画に飽きたからクラシッククロームにしようとか、ISOを変えようとか、そういう操作をとても簡単に行うことができました。ISOは上限を3パターンで登録していて、最高でもISO1600にしています。ISO上限を決めておくことで、絞りリングによるシャッタースピードの調整がおこなえるようになるので。

──AFの設定を教えてください。瞬間を切り取るスナップではどのモードを多用するのでしょう。

「AF-S+ゾーン」を標準設定にして、ゾーンの位置をフォーカスレバーを使い変更するようにしています。右側に被写体となる人物が現れそうなときは右寄りにゾーンを合わせておくというような使い方です。ときどき、1mほどの距離に置きピンをして撮ることもあります。間近にいる人を急に撮ることもあり、置きピンの方がスピーディーに撮れることもあるんです。

──メカニカルシャッターと電子シャッターのどちらを使いますか?

スナップで人に気付かれてしまう頻度は多くなっても、機械作動音がするメカニカルシャッターで撮るようにしています。シャッターを切る度に、その音でストレスが消えていくんです(笑)。撮っているという感覚こそが大切ですね。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──ここから作品を見ながらお話しを伺っていきます。まずお祭りの写真です。

僕が住んでいる川越のお祭りです。この写真を撮ったとき、レンズの性能に驚きました。これはお借りしたXF18-55mmF2.8-4 R LM OIS で撮っています。ズームレンズは単焦点レンズに敵わないという先入観を持っていましたが、こんなにキレイに写るんだと。顔の輪郭の浮き上がり方などは素晴らしいですよね。普段は28mm相当の画角が好きなため、XF18mmF2 Rを使っていますが、それだとかなり近づいて撮ることになります。威圧感を与えずに高画質で撮れるのはいいですよね。食わず嫌いでした。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

これも川越の祭りで、写っているのは下の娘です。2008年9月に、子供を撮るためにカメラを買ったのが写真を趣味にするきっかけでした。もともとは絵を描いていたものの止めてしまって、その代わりにカメラをやりたいと思ったんです。勉強のために風景を撮っていた時期もありますが、人間の喜怒哀楽が写ることが写真のたまらないおもしろさだと感じ、ストリートスナップにのめり込んでいきました。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──都心でのストリートスナップで、普段の作風だと思います。

愛用しているXF18mmF2 Rを使い、AFをゾーンにして撮っています。これがだいたい被写体まで1mの距離感。構図のバランスを考え、ちょうど歩いている人がこの編にくるなというところでシャッターを切ります。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

印象的な影が出ていたので、人が通るのを待ち撮影しています。明暗差が激しいため露出を測るために試し撮りはしていますが、連写は好きではないので、一発勝負。カメラの力で撮ったのではない、という点にこだわりがあります。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──色の美しさが印象的です。

これはクラシッククロームで撮っていて、JPEG撮って出しです。これまではRAW現像をするのが基本でしたが、X-E3に変えてからは、JPEG画質に満足しており撮って出しにしています。ほとんどがクラシッククローム。ウソっぽくない本当の色というか、現像処理をすると逆にウソが出てくるほど素晴らしいJPEGだと思っています。一度の撮影で1000枚以上は撮るので、いちいちRAW現像するのは困難ですし、現像処理に時間を使いすぎていると自分は現像屋なのか?と疑問を感じてしまったり。極力、撮影時に完成に近づけたいですし、余計な手順を踏まないで済むのならさらにその方がいいですよね。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

トランプ大統領が来日しているときの外国人デモの様子です。誰か通るとさらに絵がおもしろくなると思ったら、この方が目の前を通ってくれてメリハリが出ました。大好きな1枚ですね。しかし、こういうストリートスナップはSNSではいいねが付きづらいです(笑)。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──これはストリートスナップではなくモデルさんでしょうか。

そうです、これはモデルさんにご協力をいただいています。浅草寺の裏道で、光の当たり具合がよかったので撮りました。肌やドアのグラデーションの描写が素晴らしいですよね。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──自分撮りですね。

誰も僕のことを撮ってくれないので(笑)。鏡などがあると、ついつい自分のことを撮ってしまいます。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──少しハイアングルに感じますが、これは背面液晶使用でしょうか。

いえ、これはEVFを覗いて撮っています。僕は少し背丈があるので、EVFを使うと逆に被写体の目線と合わないことがあります。しっかりと撮りたいときには、被写体にバレてもいいからEVFを覗きますが、目線をしたに下げたいときは背面液晶も使います。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──空の色が美しい夕刻のスナップです。

空に露出を合わせたら、シャドウ部が黒く潰れるのではと意地悪なことを考えて撮ったのですが、空の色もしっかりと出ていてシャドウ部も出ている。すごいですよね。露出補正もしていなくて、構えて撮ってすぐにこのクオリティーです。シャープネスを目いっぱい+にし、シャドウも+2にしています。そのような微調整をかなり強めにおこなっても、破綻がまったく起きないことに驚きました。

Interview Vol.3 藤谷弘樹

──これからもストリートでの撮影を楽しんでいきますか?

いまストリートスナップは、なんでも盗撮や犯罪みたいに捉えられることが多いですよね。雑誌掲載や展示も嫌がられることがあり、だったら自分たちで展示も本もやってしまおうということで「VoidTokyo」で活動しています。いまの街や人を撮る人が誰かいないと、例えば30年後にいまを伝えることができません。普通に街中で写真が撮れる日が訪れることを目指し、これからもストリートで撮っていきます。

藤谷弘樹さんの写真

東京カメラ部コンテスト入賞者

藤谷弘樹 Hiroki Fujitani

1964年神奈川県生まれ。現在私を含む11人のストリートフォトグラファーと共に変化し続ける街、東京をテーマにWebではmemberがリアルタイムに発信し、紙媒体ではZineとして発刊しているプロジェクト「VoidTokyo」メンバーの一人。

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